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―現役時代の頃と比べて、現在の食生活は何か変わりましたか。
また工夫されていることがありましたら教えてください。

『だいぶ変化しましたね。現役時代のように栄養士さんがいてしっかりと栄養管理をしてくれる食事環境ではないですし、なかなか時間通りに食べることができなかったり、外食をしなくてはならなかったり…。栄養も偏りがちになりますので、なるべく家では野菜を摂るように心がけています。ダッチオーブンで蒸し野菜にしたり、具沢山のスープにしたり、野菜レシピを多くして栄養をバランスよく摂るように意識しています。現役時代よりも太ってしまったので、食べるタイミングや食べ方を自分の中でコントロールをしています。』

―太った…。スタイルが良くて、うらやましい限りなのですが。
そういえば、現在もしっかり合宿を行っていらっしゃるそうですね。

『年に2~3回お休みをもらって、10日間ほどアメリカのボルダーに行って練習をしています。ボルダーは現役時代に毎年半年近くを合宿で過ごした街で、私にとってはすごく大切な場所なのです。今も毎日走ることを続けたいのですが、思い通りにできない日も多いため、ボルダーではストレス解消とともに、走る楽しみや現役時代を思い出して走っています。そして、その間は毎日朝夕2食料理を作り、現役時代のようにバランスのよい食事を心がけています。そうやって1年間に2~3回、徹底して自分らしく生活することは、モチベーションにつながっていると思います。』

―お話をうかがうだけで、すがすがしい空気が伝わってきます。
市民ランナーの皆さんはなかなかそこまで徹底できないと思いますが、
食事面で工夫した方が良いことなどがあったら教えてください。

『栄養バランスのよい食事はもちろんですが、ランナーは貧血になりやすいので、貧血予防の食事を心がけてください。というのは、ランニングで着地をしたときに赤血球が壊れていくので、貧血になりやすいんです。貧血予防のために、なるべくレバーやひじきを摂るようにするといいですね。
一回に大量に食べるというよりも、レバーなら2~3切れ、ひじきなら小鉢程度を続けて摂ることをお勧めします。ひじきやレバーは大量に調理して、その後パックに分けて冷凍保存もできるので、作り置きしておくと便利です。』

―健康にも良さそうですね。ところで、やはり聞きたい、睡眠について(笑)。
大会前日は眠れましたか。なにか気をつけていらっしゃったことはありますか。

『初マラソンの時は緊張して眠れませんでしたが、それ以後は、ほぼいつも通りの睡眠ができていたと思います。なるべく普段通りを心がけるということですね。試合のことを考えていろいろ想定すると緊張してしまうので、これまでやってきたことを出すんだ、っていう心持ちで過ごすようにしていました。ただ、たとえ眠れなかったとしても、起き上がって携帯やパソコンなどを見るのではなく、しっかり横になって身体だけでもゆっくり休めておくことが大切だと思います。』

―遠征先などでの睡眠環境の変化には、どのように対処されていましたか。

『自分に合っているところ、合わないところ、眠れるところ、寝付けないところというのはあったように思います。睡眠のために何か寝具を持っていくということをしていなかったので、無理やり寝ているということが多かったですね。何か工夫できていたらよかったのですが、できなかったのが現実でした。
ただ、現役を引退した今は、少し違います。ライズTOKYOさんと出会ったおかげで、携帯できるマットレスパッドやハーフケットを出張先に持って行き、どこでも快適に眠れるようになりました。』

高橋尚子さん、ありがとうございました。高橋さんにとって、走ることはライフワークであると同時に、いちばん自分らしくいられる大切な時間であることを感じました。今後もファンの皆さんへ向けて、貴重な情報を発信してください。どうぞよろしくお願いします。