2022.08.22

東京五輪を見て流した涙…会社を辞めた青木蘭が、プロラグビー選手として掴んだ日本一。

image4 7

本特集企画「決戦前夜〜眠れない夜の裏話〜」では、アスリートやスポーツ指導者などの“決戦前夜”に迫ります。

第16回のゲストは、女子ラグビー・横河武蔵野アルテミ・スターズ所属の青木蘭(あおき・らん)選手です。3歳からラグビーを始め、島根県の石見智翠館高校女子ラグビー部で全国制覇を経験。慶應義塾大学卒業後は、会社員として働きながら競技を続けるも、2021年9月に退職し、プロラグビー選手への転向を発表しました。2022年1月に開催された第8回全国女子ラグビーフットボール選手権大会では、全国制覇を達成しました。

選手としてだけでなく、ライターやSNS運用代行、YouTubeでの情報発信など、女子ラグビー界のロールモデルとなるべく活動の幅を広げている青木選手。前十字靭帯断裂の大怪我の影響もあり、「夢をあきらめていた」と語る彼女の心に再び火をつけたのは、2021年の東京オリンピックでした。プロとして再スタートを切ってから3か月で全国制覇を達成した青木選手。日本一に輝くまでに歩んだ日々を伺いました。

 

高校時代に10キロ増。大きな相手にも負けない体へ

コンディショニングを意識しはじめたのは、高校卒業後です。大学生のときに所属していたクラブチームのトレーナーの存在が大きいですね。たとえ怪我をしていなくても、体のメンテナンスを欠かさずしていました。体が資本なので、必然的にやらなければいけないものとして、知識をつけていきました。

正直、中学生まではほとんど考えていなかったです。ただ、高校生になったときに、「活躍するためには体重を増やさないと」と考え、ご飯をたくさん食べるようにしました。寮で出される食事は3食ともしっかり食べ、高校入学時の48キロから卒業する頃には58キロまで増やしました。

相手にタックルするラグビーにおいて、体重はとても重要です。体重差のある相手にタックルするとき、体にかかる負担は大きいからです。ただ、体重があっても脂肪が多ければ意味がありません。俊敏性は保ちながらも、体重を増やす必要があります。ほとんどの選手が60キロ以上あるなかで、私は増やしても50キロ台。それでも試合中は、どんなに大きな相手に対してもぶつかっていかないといけないません。「どうしたら負けないか」を常に考えていました。

体格差のある相手にタックルするのは、本当に怖かったです。ただ、正面でぶつからないなど、工夫はできます。実際に、男子といっしょにプレーしていたときは、私をターゲットにして狙ってくるチームもありました。弱点を突くのは当たり前ですからね。そういう時は、チームメイトに「相手は私を狙っているから、サポートしてほしい」と伝えました。そんなことはあまり言いたくないですが、チームが勝つためには仕方のないことです。

コンタクトスポーツですし、ポジション的にもタックルされやすいので、怪我は少なくなかったです。ただ、高校時代までは大きな怪我はなかったですね。ストレッチやウォーミングアップは、誰よりも入念にやっていました。一方で、間違った知識を実践していたり、正しくない体の使い方をしたりして、怪我をしてしまったことはありました。

image3 13 ロゴ

東京五輪をテレビで見て涙。「自分は何をしているんだろう」

プロになる決意をしたのは、2021年の東京オリンピックがきっかけでした。私は、東京オリンピック開幕の約1年前、2019年6月に前十字靭帯断裂の大怪我をしてしまいました。試合中、外国人選手2人がかりのタックルを避け切れず、ひざをひねってしまったんです。

その怪我に加えて、新型コロナウイルスの影響もあり、オリンピック出場という夢を断念。当日も、テレビで試合を観戦していました。ただ、それを見ていたときに、夢をあきらめてしまった自分に対して、すごく悔しかったんです。

これまで何事もあきらめない気持ちを大切に取り組んできたのに、オリンピック出場という夢をあきらめて、涼しい部屋で試合を見ている。「自分は何をしているんだろう」と。もう一度、人生をかけて真剣にラグビーと向き合いたい。何かを変えないといけないと思い、会社を辞めてプロになることを表明しました。

私は3歳からラグビーを始めましたが、一度も日本代表に選ばれたことはありませんでした。ただ、大会でMVPに選出されるなど、結果は出していました。正直、「これ以上なにをしたら日本代表になれるのか」「これだけやって選ばれないなら無理だ」と、自分自身を納得させて夢をあきらめていた部分もあります。でも、やり続けないと夢は叶いません。悔しくて涙を流した自分の気持ちと、もう一度向き合いました。

 

感情に左右されず、事実だけを受け入れる

怪我をした当時を振り返ると、仕事と競技を両立しなければならず、ケアへの意識が薄れていたと思います。2つのことを同時にこなすのはすごく難しかったですし、ロールモデルがいなかったので、どう乗り越えればいいかも分からなかった。ずっと一人で悩んでいました。

そうした反省から、翌日に疲れを持ち越さないトレーニングやケアをするようになりました。あとはメンタルの部分です。女性は男性と比べて、感情で動きやすいとされています。そんな中、感情ではなく、起こっている事実だけに着目してプレーすることを意識しています。

プロ選手である以上、すべての結果が今後のキャリアに繋がります。試合に出られなかったり、リザーブだったりすると、「どうしてなんだろう」と焦ってしまいがちです。そういったときに、事実だけを受け入れるんです。このように、人間が困難に直面したときに発揮する能力を“ライフスキル”といいます。

スタメンで試合に出られないとしても、やることは変わらない。やるべきことをノートに書き出して、毎日淡々とこなしていきました。すると、徐々にチームメイトからの信頼を得られ、2022年1月に優勝した全国大会では、スタメン出場することができました。 事実に対して何ができるかを考えることで、成果をあげることができました。

image2 15 ロゴ

想定外の決勝戦。司令塔として、苦戦するチームの拠り所に

どの試合も吐きそうになるくらい緊張しますよ(笑)。そんな中でもとくに緊張したのは、先日の全国大会です。実は、もう一方の準決勝の試合がコロナで中止になってしまい、試合前日に事実上の決勝戦へ変更になったんです。試合に向けて、どのように気持ちを高めていくか難しかったですね。

試合当日も、これまで感じたことのない緊張感がありました。めずらしくノックオン(ボールを前に落とす反則)をしてしまったり、チームとしても思ったよりリードを広げることができなかったり……7-0でリードしていたものの、前半は苦戦を強いられました。

私はSO(スタンドオフ)という司令塔のポジションでプレーしています。他の選手以上にチームの戦術を理解して、自分だけでなく、チームもコントロールしなければいけません。ハーフタイムは、歯車が嚙み合っていない中で、どう立て直すかをイメージし続けていました。後半はSOとして積み上げてきたものを発揮して、最終的には28-0で勝つことができました。プロとして一つ結果を残せたので、次は連覇が目標です。

image5 2

「ラグビーの魅力を伝える使命がある」

ラグビーには世界を一つにする力があり、女子ラグビーは女性に勇気を与えられるスポーツだと思っています。国籍や性別、身長体重など関係なく、選手は与えられたポジションで努力を続け、自分が信じた道を突き進んでいる。紆余曲折があったなかでプロ女子ラグビー選手としてプレーすると決めた私には、こうしたラグビーの魅力をプレーと言葉で伝える使命があります。

あともう一つ夢があるとすれば、お母さんになって、自分がラグビーをしている姿を子どもに見せたいですね。

image1 15

 

■セール&キャンペーン実施中!ライズの製品がお得に買えるチャンス!
「スリープオアシスってやっぱりすごい!」キャンペーン実施中
スリープオアシス 極上の睡眠キャンプフェア開催中!

■睡眠に関する質問を受付中!
ライズTOKYOでは、睡眠に関する質問を受け付けています。
質問は、公式Twitter(@risetokyo)へのリプライでお願いいたします!

スリープオアシスについてはこちら