体のコンディションはプレー中の閃きにも影響する
現役時代、左利きの司令塔として活躍した名波浩さん。Jリーグでは通算334試合に出場して34得点。ベストイレブンに4度選出されました。1999-2000年にはイタリア セリエAのヴェネツィアでプレー。さらに、日本代表として国際Aマッチに67試合に出場して9得点。2000年のアジアカップではMVPを受賞しています。
長きに渡り第一線で活躍していた名波さんですが、体のケアに注力するようになったのは、意外にもイタリアに渡ってからなのだそうです。
「イタリアに行くまでは、正直ケアに関してはルーズなタイプでした。いろいろな人からアドバイスをもらったというのもありますし、シーズンを通してクラブのスケジュールがハードだったこと、日本代表に合流するための移動が過酷になったこともあってケアに力を入れるべきだろうと思ったんです。専属のトレーナーをつけて、トレーニング後、試合後にしっかりとケアの時間を設けるようになりました」
イタリアのグラウンドはどこも粘土質。それゆえ下半身への負荷が大きかったとも言います。
「ヴェネツィアのフィジカルコーチに体重を増やせと言われて、毎日のように上半身の筋力トレーニングを課されていました。上半身が大きくなったのは筋トレの効果なんですが、下半身は筋トレをしていないのに太腿が3cm太くなったんです。これは明らかにピッチが粘土質で重たかったからだと思います」
国境を跨いだ移動が多いのもサッカー選手の特徴です。名波さんもイタリアと日本の往復、日本からアジア各国への遠征を繰り返しました。時差との戦いも過酷です。
「飛行機で10時間、12時間の移動は当たり前でしたし、時差もあります。いかに睡眠時間を確保するか、質の高い睡眠をとるかというのは、プロのサッカー選手にとってはとても重要なことだと思います」
体のコンディショニングに睡眠は大切な要素。それは、サッカー選手の試合当日のスケジュールからも窺い知ることができます。
「たとえば試合が19時キックオフだったとしましょう。午前中に練習をするかどうかは監督次第なところがあります。日本代表のトルシエ監督時代は30分程度、フォーメーションの確認やボール回しをしていましたし、イタリア時代はセットプレーの練習をしていました。練習をしない監督の場合も昼食の前に散歩の時間があります。昼食後13~15時ぐらいが昼寝の時間。前日眠れなかったりすると、特にこの時間が貴重です。僕は、朝起きるのが遅くて、昼寝をしっかりするタイプでした。遠征先では基本的に二人部屋なんですが、クラブはストレスがないように生活リズムが似ている選手同士を同部屋にすることが多いですね。昼寝を終えたら、炭水化物、果物などの軽食をとって試合会場に向かいます。イタリアにはワインが体を作る、血を作るといった伝統的な考え方があって、僕がプレーしていた頃は、軽食の際に必ず全員でワインを飲んでいました(笑)」
リズムを作り局面を打開する長短のパスや、試合を決める決定的なプレーをチームからもサポーターからも求められていた名波さん。一瞬の閃きが浮かぶかどうかは、練習の積み重ねが何よりも重要で、コンディションにも左右されるのだと言います。
「練習で何枚も何枚もスケッチブックに絵を描き続けて、その絵が試合中にパッと浮かぶという感覚ですね。脳科学的なことはわからないですが、コンディションの良し悪し、チーム状況、ストレス、疲労などは、閃きの頻度や視野の広さに関係している気がします。そういう意味でもサッカー選手にとって睡眠は大切な要素なのかなと思います」
名波さんは、コロナ禍による外出自粛期間中、自宅で過ごす時間が増えたことで、改めて寝室の環境と寝具の重要性を感じたそう。そして、ライズの高反発マットレスを使うようになり、目覚めたときの体の状態が大きくが変わったのだとか。
「現役時代に3回手術した右膝は、きれいに伸展しないし、正座もできません。眠るときも右側を下にできなくて姿勢が偏るから、起きたときに体が重いことが多かったんです。ライズのスリープオアシスを使うようになってからは、体が沈み込まないおかげで負担が一定の部位に集中しなくなったからか、調子が良いんです。毎朝7km走ることを日課にしていて、以前はウォーミングアップで体が動き始めるまでに凄く時間がかかっていたんですが、今は起きた瞬間から動ける感じです。僕の生活から完全に手放せないものになりましたね」
J2松本の新監督に就任された、名波さん。選手への睡眠コンディショニングの指導も楽しみです。